3 月 21 日(水)15 時より、国立オリンピック記念青少年総合センターにて日本社会人団体馬術連盟主催による馬術セミナーを開催しました。
今回の講師は、雑誌「UMA LIFE(馬ライフ)」で取材も担当している太田宏昭氏にお越しいただきました。太田さんは愛媛県宇和島市出身、中学生の頃に親が姉に買い与えた一眼レフカメラで写真を撮り始め、大阪芸術大学写真学科を卒業後、写真家村上ひろし氏に師事、ファッション関連のカタログ撮影の撮影助手を務め、独立後は雑誌家庭画報、サライ等で商品写真や人物の撮影などを行っていました。
<太田宏昭氏>
2006 年に NHK で放映されたディープインパクトの凱旋門挑戦を描いた特集番組でサイレンススズカの話が出てきて、その馬に惹かれ生産牧場を訪ねたことが馬の撮影をするようになったきっかけです。その年の暮れ、ばんえい競馬が次々に廃止される中、その姿を 残したいという思いで帯広に通うことになり、その 10 年間の集大成として写真展を開催。2015 年からは馬ライフの撮影を始めています。
馬術に関する知識は全くなかったけれど、自ら乗馬を始め馬に乗ること、操ることを自身で体験し、撮影に活かされているとのこと。
セミナー当日は春分の日にもかかわらず東京都内では 20 数年振りの雪が降りしきる中、社馬連会員からは山口会長夫妻を始め、一般の方からも含め、 40 名が集まりました。
<セミナー会場の様子>
太田さんが写真を撮る上での説明されたポイントは「技術」と「感性」の 2 つです。まず「技術」に関してですが、主にデジタル一眼レフカメラに関する内容でしたので、普段スマホで撮影されている方には専門用語が出てきて少し難しかったかもしれませんが、全てのカメラに共通するポイントも多かったと思います。ポイントをまとめると次の内容になります。
1.デジタルカメラの特徴を生かすには RAW(Raw image format の略で、撮影した生の画像のこと。)での撮影をお勧め。撮影後にパソコンで画像の加工ができるので、撮影画像を最高に活用することが可能。(※一般的には JPEG で撮影するが、パソコンでの加工ができません。)
2.大事にしているのは「絞り」。絞りで写真の雰囲気が大きく変わる。絞りを開放(大きな値)にすると前後に広い範囲でピントがある。絞りを小さな値にすると狙ったポイントだけに焦点が合い、前後はぼやける。人と馬だけにピンとを合わせたい場合などは絞りを小さくして撮影。
3.フィルムカメラとデジタルカメラの大きな違いは、フィルムはホワイトバランスと色温度が固定。デジタルは設定を変えることができるデジカメでホワイトバランスを太陽光に設定すると、青っぽい雰囲気の写真が取れる。RAW で撮影しておくと、ヒストグラム(撮影した画像にどれぐらいの明るさの点があるかを表したもの)を確認しながら加工を行うことができる。
4.天気が良い日は順光で撮るとヘルメットの影が顔に映り込むので、逆光で撮影する。
5.障害の撮影を行うときは正面からではなく、次の障害に向かうポイントで撮影する。
6.天気が悪い日は逆に雰囲気のある写真が撮れるので、あきらめずに撮影すること。
7.馬の撮影を行う上でのポイントとカメラの設定について
・馬の目にピントを合わせる。
・前脚がいい形になっているタイミングで撮影。
・蹄や脚が画像から切れている写真は嫌われる(縁起が悪いとされるため)
・シャッタースピードは 1/1000 以上
・動体予測に設定
・連続撮影モード
・ハイライト警告表示 ON
・ヒストグラムを確認
セミナー受講者の中には、持ち込んだ愛機を操作しながら熱心にメモ取られている方もいらっしゃいました。
<愛機を抱えての参加>
後半は「感性」に関しての説明でした。日本だけでなく、イギリスの湖水地方、パリ、コートダジュール等世界中で撮影した 100 点ほどの写真等を紹介。非常に感性の高い写真ばかりで、こちらは参加者の皆さんも食い入るように映像を見ていました。
その後は、ばんえい競馬の写真を紹介。レース中の迫力ある写真だけでなく、馬の吐く息が白くなる早朝の写真や、装蹄中の写真等を紹介されました。
<ばんえい競馬の競走馬>
説明終了後には、予定時間をオーバーするほどの積極的な質問があり、それぞれの質問に対し分かり易く回答をしていただきました。最後に事務局から「スマホでうまく撮影するポイントは?」の質問に対しては「スマホの画質は広角なので周囲にひずみができます。できるだけ下から撮ってあげればきれいに撮れます」とのアドバイスをいただきました。
セミナー受講者だけでなく、本コラムを読んだ方にもすぐに活用できる内容が多くありますので、これからの試合や講習会、プライベートの写真撮影等に是非活かしてもらえることを期待しています。大雪の中の貴重な時間となりましたこと、太田講師に感謝いたします。
(普及委員会 担当)