2月26日(日)の午後3時半から1時間半に渡り、国立スポーツ科学センターにて、日本社会人団体馬術連盟主催による、馬術セミナーを開催しました。
講師の福島大輔さんは、10歳からお父様が経営する佐倉ライディングクラブで乗馬と競走馬の育成を始められ、全日本大障害選手権の優勝最年少記録(17歳)を保持されるなど、ジュニア時代頃から国内外での馬術大会で数々のタイトルを獲得。プロである現在、リオデジャネイロ2016大会に馬術障害飛越で日本代表選手としてオリンピック出場のほか、2016年の全日本障害飛越選手権優勝と、今、最も活躍されている選手です。
会場には社馬連会員だけでなく、一般の方や当日同一会場で開催の審判講習会参加者を含む、30名程の参加者が集まりました。セミナーでお話いただいたポイントは、次の3つです。
1.馬術(障害)が楽しくなる秘訣
2.馬術(障害)技術向上の秘訣
3.借与馬戦含めた試合で勝つための秘訣
集った聴衆者は、乗馬を始めたばかりの初心者、これから競技会を目指したい人、既に競技会で活躍している人まで、さまざまな技術レベルになります。どのようなレベルの人でも勉強になるようにと講演内容を精査しつつ、当日に向けて、「プロジェクターは用意できますか?」「ホワイトボードはありますか?」と、お忙しい中、講師には積極的に準備に取り組んでいただけました。
講師のお話の素晴らしさは、解り易い例え話、実例がふんだんに盛り込まれていることでした。どのレベルの人でもイメージがつき易いからこその理解と納得感。お話いただいた3つのポイントを以下にまとめます。
1.『馬術(障害)が楽しくなる秘訣』では、ジュニア選手の育成もしている講師だからこその内容でした。「最終的な大きな目標を明確にする」、「その時々のレベルに合った小さな課題を作り、達成感を感じ続ける」等、モチベーションを向上させながら馬と共に成長していくことこそが、結果的に上達にも繋がる、だから楽しくもなるということ教えていただけました。また、馬の習性についても細かく説明いただいた中で、改めて大きな気付きがあったことがあります。馬が真後ろは見えないから不安になることは誰もが知っていることです。しかし、乗り手は正に馬の真後ろに存在し、見えていない存在であることを意識して乗っている人はどのくらいいるでしょうか?いつも当たり前のように馬に乗っていますが、乗り手のことを馬は見ることはできず、感じることしかできない―だからこそ、馬に安心してもらう為にも、正しい扶助の大切さが必要になるということを改めて痛感させられたお話でした。
2.次の『馬術(障害)技術向上の秘訣』では、勘違いしていたり、よくありがちな悪い例と正しい姿勢について、写真を用いての説明です。聴衆者から、『あ~自分だ』の心の声があがるような、頷きや納得の声があがりました。講師が重要視していたことは、「基本練習を積み上げる」ということ、つまり基本の重要性でした。聴衆者は皆、自身の課題とどのように改善すればよいかの具体的策を教えて頂けました。
写真や実際のハミを使い、さらにはホワイトボードに絵を書いてといった説明で、聴衆者が講師の話にどんどん引きこまれていくのが会場の雰囲気から伝わってきました。
3.日本社会人団体馬術連盟の多くの試合は、借与馬戦となります。そこで、『借与馬戦含めた試合で勝つための秘訣』についてお聞きし、コース走行における下見のポイントや、準備馬場ではどのような運動をしておく必要があるのか等を教えていただきました。講師が説明する上で大変良いという、海外のCSIWの実際の経路図を使い、下見のポイントを聞くことができました。また、準備馬場では、トップラインの緊張の緩和、斜体・側体扶助、コレクション、スピードコントロールに繋がる脚の反応の確認など、試合前の運動について教えていただきましたが、普段の練習から常にコース走行をしているイメージで乗ることの大切さを講師は強調されていました。
最後は個々の質問に、講師が親切かつ丁寧に、解り易く回答して下さいました。個人個人の課題をトップライダーに近い距離で質問できる場は、大変贅沢な時間でした。
興味関心をそそる講師のお話に、1時間半の講演はあっという間に終了という感じで時間がきてしまいました。選手としても一流、加えて講師(教える側)としても一流の姿がそこにはあり、馬術への刺激と感銘を受けた方が多かったのではないでしょうか。福島選手の引き続きのご活躍、そして東京オリンピックでのガッツポースの実現を、心から願うばかりです。
(普及委員会 担当)